大分リフォームLabo 編集長のReno(リノ)です。
このブログでは、大分を中心に、住まいのリフォームについての情報を発信しています。
普段は、フルリフォームのような大きな工事から、
水回りのリフォーム、換気扇やドアノブの交換といった
「これ、どこに相談したらいいんだろう?」という小さな工事まで、
幅広く現場に関わっています。
建築士や施工管理として現場に立ちながら、
年間を通して、大小あわせて200件近くの住まいと向き合っています。
このブログでは、机上の話ではなく、
現場で実際に感じていることをもとに、
できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
まだ何も決まっていなくても大丈夫です。
あなたが安心して、納得できる判断をするための
ひとつの参考になれば嬉しいです。
空き家バンクの物件、リフォームして住むのは「アリ」か?
最近、大分でも「空き家バンク」を利用して中古住宅を購入し、自分好みにリフォームして住みたいというご相談が増えています。
確かに、新築の価格が高騰している今、あえて古い家を選び、浮いた予算でこだわりの内装にする……というのは、とても賢い選択肢に見えますよね。しかも、自治体からの「補助金」が出るとなれば、背中を押される気持ちになるのもよく分かります。
でも、正直に言いますね。 現場を預かる建築士としての本音を漏らすと、空き家バンクの物件リフォームは「めちゃくちゃ面白いけど、同じくらい覚悟も必要」な世界です。
「補助金が出るからお得ですよ!」と手放しでおすすめするのは、少し無責任かな……と私は思っています。なぜなら、補助金をもらうための条件が意外と厳しかったり、古い家特有の「開けてみないと分からない不具合」があったりするからです。
この記事では、大分で空き家バンクの物件を検討しているあなたへ、補助金のリアルな中身と、現場人間だからこそ言える「ここだけは見ておいて!」という注意点をまとめました。
1. 大分市や県内自治体で使える「空き家補助金」の正体
大分県内の各市町村(大分市、別府市、由布市など)では、空き家バンクに登録されている物件を対象とした補助金制度が用意されています。
代表的なのは、大分市の「大分市空き家利活用支援事業」のような制度です。
主な補助内容のイメージ
- 改修費用の補助: 上限50万円〜100万円程度(工事費の1/2〜2/3など)
- 家財道具の片付け費用: 上限10万円〜20万円程度
これだけ見ると「お、100万円も浮くのか!」と嬉しくなりますよね。でも、ここで大切なのは「何でもかんでも補助されるわけではない」という点です。
補助金をもらうための「高いハードル」
現場でよく直面する「補助金の落とし穴」は、主に以下の3つです。
- 「空き家バンク」登録物件であること 普通の不動産サイトで見つけた中古物件は対象外になることがほとんどです。あくまで自治体のバンクに載っていることが大前提。
- 税金の滞納がない、居住目的であるなどの個人条件 「セカンドハウスにしたい」「民泊にしたい」という場合は、補助金の対象から外れるケースが多いです。
- 「耐震基準」を満たす必要がある これが一番の難所です。古い空き家の場合、今の耐震基準を満たしていないことが多く、補助金をもらうためには「耐震補強工事」もセットで行うことが条件になる自治体が少なくありません。
大分市の条件では「昭和56年5月31日以前に着工された住宅については、改修後までに耐震性を有していると認められること。(移住者購入補助事業については木造の住宅に限り、補助金申請時までに耐震性を有していること。)」と記載があります。
Renoの本音: 正直なところ、耐震補強工事には150万円〜200万円以上かかることもザラにあります。補助金で50万円もらえても、工事費がそれ以上に膨らんでしまう。「補助金をもらうために、予算をオーバーする工事をする」という本末転倒な状況にならないか、じっくり考える必要があります。
2. 建築士の私が空き家物件を見るとき、どこをチェックしているか
私は仕事柄、「既存住宅状況調査士」として、古い建物の健康診断をすることがあります。空き家バンクの物件を見に行くとき、私はきれいなキッチンやオシャレな間取りよりも、まず「家の悲鳴」を探します。
あなたが内覧に行くときに、ぜひチェックしてほしいポイントを絞ってお伝えします。
① 「におい」と「足の裏」の感覚
玄関を入った瞬間に「カビ臭い」と感じたり、床が「ふわふわ」と沈む感覚があったりしませんか? これは、床下の湿気がひどかったり、シロアリの被害が進行していたりするサインです。表面の畳やフローリングを替えるだけでは治りません。根っこの部分(大引や根太といった木材)の交換が必要になり、リフォーム費用が跳ね上がります。
② 天井の「シミ」は現在進行形か?
雨漏りの跡がある物件は多いです。「昔の台風のときのもので、今は直っています」という言葉を鵜呑みにするのは少し危険です。 私は現場で天井裏を覗きますが、雨漏りは柱を腐らせ、家の寿命を劇的に縮めます。もし雨漏りがあるなら、屋根の葺き替え(数百万円単位)を覚悟しなければなりません。
③ 住宅設備(水回り)の「古さ」
空き家バンクの物件は、10年以上誰も住んでいないこともあります。そうなると、配管が錆びていたり、詰まっていたりすることがあります。 「蛇口を替えるだけ」と思いきや、床下の配管ごと全部やり直し……という現場もたくさん見てきました。
3. 「失敗しない」ためのリフォーム計画の立て方
「思っていたよりお金がかかりそう……」と不安にさせてしまったかもしれません。でも、空き家リフォームを成功させて、自分らしい暮らしを楽しんでいる方もたくさんいます。
その違いは、「優先順位の付け方」にあります。
Reno流・優先順位の考え方
リフォームには、大きく分けて3つの段階があります。
- レベル1:住むための基本性能(屋根、構造、配管、断熱) ここにお金をかけないと、せっかくリフォームしても「冬は凍えるほど寒く、夏は蒸し風呂。おまけに雨漏りが……」という悲しい結果になります。
- レベル2:生活の利便性(キッチン、お風呂、トイレ、洗面) 毎日使う場所なので、ここは新しくしたいですよね。でも、最新の高級グレードである必要はないかもしれません。
- レベル3:見た目のこだわり(壁紙、照明、床材、造作家具) ここが一番楽しい部分ですが、予算が足りなくなったら「DIYで自分で塗る」という選択肢も残されています。
よくある失敗は、レベル3のデザインに予算を使いすぎて、レベル1の基礎工事をケチってしまうことです。 建築士としては、「目に見えないところほど、ちゃんとお金をかけてほしい」というのが切実な願いです。
4. 現場で感じる「空き家リフォーム」の醍醐味と迷い
ここで少し、現場の話をさせてください。
以前、大分市内の築50年の空き家をリフォームしたときのことです。 お客様は「補助金を最大活用して、安く仕上げたい」というご希望でした。でも、解体してみると、柱が一本、腐って浮いているのが見つかったんです。
そのまま蓋をしてしまえば、お客様には分かりません。予算も守れます。 でも、私は迷った末に「補助金が出るからといって、このまま進めるのはお勧めできません。予算を少し回して、ここを補強しましょう」とお伝えしました。
結果として、こだわりのキッチンは少しグレードを落とすことになりました。でも、そのお客様は今、その家で「安心して眠れるのが一番の幸せです」と笑ってくださっています。
リフォームには「これが正解」というものはありません。 「補助金をもらって安く済ませること」が正解の人もいれば、「予算はかかっても100年持たせること」が正解の人もいます。 私は、その間にある「ちょうどいい落としどころ」を、あなたと一緒に悩みたいと思っています。
5. 大分で空き家リフォームを考えるあなたへ:まず何をすべき?
もし、あなたが今「この空き家、いいかも」と思っている物件があるなら、以下の手順で進めてみてください。
- 自治体の空き家バンク担当窓口に「補助金の条件」を確認する (「今年度の予算はまだありますか?」も大事な質問です)
- 物件に詳しい業者、あるいは建築士を同行させて内覧する (不動産屋さんの視点だけでなく、”作る側”の視点を入れてください)
- 「やりたいことリスト」と「絶対に譲れないことリスト」を作る (全部盛りは、予算を壊します……!)
- 概算見積もりを見て、補助金を差し引いた「本当の持ち出し額」を知る
正直、空き家バンクの活用は、手間も時間もかかります。新築を買う方が、ずっと楽かもしれません。 でも、古い柱の傷や、かつての住人のこだわりが詰まった空間を、自分の手で再生させる喜びは、何物にも代えがたいものです。
まとめ:正解は一つじゃないから
大分の空き家バンク、そして補助金。 これらは、あなたの理想の暮らしを叶えるための「道具」にすぎません。
補助金に振り回されて、本当に欲しかった暮らしを見失わないように。 「この金額で、本当に安心して住めるのかな?」 「この工事、本当に今必要なのかな?」 そんな迷いが出てきたら、いつでも立ち止まってください。
私たちのような現場の人間は、大きな工事だけでなく、「換気扇が回らなくなった」「ドアの建付けが悪い」といった小さな悩みにも日々向き合っています。それは、住まいのすべてが繋がっていると知っているからです。
この記事が、あなたの中で考えを整理する材料のひとつになれば嬉しいです。


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